第11章 潜入、白鳥沢学園1日目〜初めての感覚〜
「あ、は………え」
その言葉に返事をしようとしたけど、大平さんの方に視線を向けた瞬間返事は途切れてしまい、一瞬頭が真っ白になった。何故なら––––
「工!!」
大平さんに支えられる形で、工が顔を真っ青にさせていたからである。急いで駆け寄り、近くで見ると具合が悪いのだとよく分かる。
「な、何があったのですか!?」
「落ち着け白鷲。説明は後でちゃんとするから、今はさっき言った物を持って来てくれないか?」
「は、はい!」
取り乱す私とは対照的に、大平さんは冷静だ。そのおかげで、先程より冷静になれた私は急いで言われた物を取りに行き、すぐ工の元へ戻る。行っている間に寝かされたのか、工は体育館の端で横になっていた。
「持って来ました!大平さん!」
「ありがとな。……ほら工、スポドリ飲めるか?」
「は、はい……」
工は掠れた声で返事をすると、起き上がろうとする。でも身体に力が入らないのか、中々起き上がれないでいた。その様子を見て、私は工の背中に手をやり起き上がるのを手伝った。
「ごめん、白鷲……」
「いえ。私の事より、今は自分の事を気にして下さい」
「はは、確かに……」
「ほら」
「ありがとうございます。獅音さん……」
大平さんからスポーツドリンクを受け取り、工はゆっくり飲んでいく。その間に、大平さんはタオルで工の汗を拭いていく。そうしている内に、他のみなさんも私達の周りに集まってきた。
「工生きてる〜?」
「生きてます……。勝手に殺さないでください……」
「……呆れすぎてもう何も言えないな」
「う〜……」
「工!お前はまたやったのか!自分のペースで走ろと、何度言わせれば気が済むんだ!?」
「うっ。す、すみません……。監督……」
「お、落ち着いて下さい鷲匠監督。気持ちは分かりますが、今の工に大声を出すのは……」
「明……」
鍛治さんの先程の言葉で、すべて理解した。工は牛島さんより早く体育館に帰って来ようと、自分のペース配分を考えずに走ったのだ。そのせいで途中で具合が悪くなり、今ここにいたるという訳だろう。
今思えば、この光景は上から見ていた時も時折あった出来事だった。驚きすぎて、その事がすっかり頭の中からすり抜けていた。