第11章 潜入、白鳥沢学園1日目〜初めての感覚〜
「ふい〜……。疲れた疲れた〜」
「あっ!みなさん!」
牛島さんと話していると、汗だくの天童さんを先頭に残りのみなさんが帰って来た。その姿を見て、牛島さんに軽く会釈してから急いでスポーツドリンクとタオルが入った籠を取りに行く。
「みなさんおかえりなさい!スポーツドリンクとタオルをここに置いておきますので、各自取りに来てください」
人数が多いから、牛島さんみたいに手渡しは出来ないけど、疲れている彼らが少しでも楽になるよう近くに置いて促す。すると、何故か全員キョトンとした顔でこちらを見てきた。……何だか既視感を覚える。
「んまっ!ありがとう、真白ちゃん!」
数秒の後、復活した天童さんが満面の笑みを浮かべお礼を言いながら近づいてきた。そしてスポーツドリンクとタオルを手に取り私を見ると、また笑顔を浮かべながら口を開いた。
「いや〜、新鮮ダネ!ロードワークから帰って来たら、マネージャーのお出迎えがあるなんて!本当にありがとね」
「い、いえ!これもマネージャーの仕事なので!」
「フフ。謙遜しなくていいのに」
「ほら、みんなもボーと突っ立ってないで取りに来なヨ〜」とみなさんを促し、タオルで汗を拭きながら天童さんは牛島さんの方に歩いて行く。その言葉と行動を皮切りに、他のみなさんもワラワラと集まってきた。
彼らは1列に並び、私にお礼を言いながらスポーツドリンクとタオルを手に取っていく。お礼を言われる度に嬉しくなり、心が温かくなっていくのが分かった。だからそのお礼に応えるべく、私も笑顔で「どういたしまして」とひとりひとり言い続けた。
「あれ?」
列も短くなり、最後尾にいた瀬見さんがスポーツドリンクとタオルを手に取ってから気付いた。工と大平さんの姿がない事に。
「あの、瀬見さん」
「ん?どうした白鷲」
「つ……五色くんと大平さんの姿がないのですが、どうしたのか知っていますか?」
「あー、2人なら……」
私の質問に、瀬見さんが苦笑を浮かべながら言いかけたその時だった。
「おっ、白鷲。近くにいてよかった。すまんがスポドリとタオル、あと一応塩分タブレットを持って来てくれないか?」
少し急いでいるような声色の、大平さんのそんな言葉が聞こえてきたのは。