第8章 潜入、白鳥沢学園1日目〜朝の自己紹介〜
「よし。それじゃあ白鷲、お前の席は五色の隣だ。ほら、お前を励ましてくれたあの黒髪がパッツンな奴な」
「!」
(工が隣……!)
その事実に驚き視線を工の方に向けると、確かに工の隣の席がポッカリ空いている。ここからでも十分近いと思っていたのに、更に近づく事が出来るなんてとても嬉しい。
一度先生に会釈してから席に着くために歩き出すと、近くを通った他の生徒さん達が口々に「よろしく」と声を掛けてくれた。それに応えるために笑顔で頷いていき、たどり着いた空いている席に座る。そしてチラリと隣を見ると、工が優しく笑いながらこちらを見ていた。それに少しドギマギしながらも先程のお礼を言うと、工は首を横に振った。
「別に大した事してないから大丈夫。それに、実は昨日、監督……白鷲のおじいさんに頼まれてたんだ」
「え?」
「何かあればあいつのフォローをしてやってくれってな」
「そうだったのですね……」
どうやら鍛治さんは、バレー部の人達には事前に私の事を話していたみたいだ。心の中で鍛治さんにお礼を言ってから、ふと気付いた。
(という事は、工は鍛治さんに頼まれてたから私を助けてくれた……?)
随分と嫌な考え方をしてしまったと自分でも思うけど、一度考え出したら止まらない。胸が少しチクリと痛み、その初めての感覚に戸惑う。思わず自分の胸にそっと触れると、工が心配そうに顔を覗き込んできた。
「大丈夫か?もしかして、体調が悪くなったのか?」
「!い、いえ大丈夫です!ありがとうございます」
顔の近さに驚きながらも大丈夫だと告げると、工はまた笑ってくれた。その表情に癒されながら、グッと気を引き締める。
(何をしているのだ、私。自分の勝手な被害妄想に傷ついて、工に心配かけさせるなんて……)
気持ちを切り替えるためにペチペチと両頬を叩いていると、ひとりの生徒が手を挙げた。
「先生!」
「どうした?鶴岡」
「1限目は先生の授業だから、その時間を使って白鷲さんのちょっとした親睦会?みたいなのやりましょうよ!」
『鶴岡さん』がそう言い出すと、周りにいた他の生徒達も賛成の意見を出している。……て、そう呑気に解説している場合じゃない。