第8章 潜入、白鳥沢学園1日目〜朝の自己紹介〜
「お前は少し過去に囚われすぎているだけで、本当は人間に対しても優しい心を持って接する事が出来る、優しい子だ。それは、わたしが保証しよう」
「私が、工以外の人間にも……」
「ああ。先の鍛治への答えが、何よりの証拠だ」
「!?………分かりました。私、やります」
(……て、大婆さまにそう言い切ったけど、すでに心が折れそう……!)
「それじゃあ白鷲、改めて自己紹介を」
「っ!?は、はい……」
先程まで一昨日の事を思い出していたせいか、驚いて思わず返事をする声が震えてしまった。それに伝染するように、自分の意思とは関係なく体も徐々に震えてきてしまう。
「あ……」
早く何か話さないと、と思うのに、声が出てくれない。そのせいか、段々と生徒達の視線が興味から訝しげなものに変わっていく。その視線に焦り、ますます体が震え声も出なくなってしまった。
(やっぱり、私にはまだ……)
「大丈夫!!!」
「!?」
無理だったんだ、と思いそうになったその時、椅子を引く音がしたと思ったら次いで聞こえてきた、聞き覚えがありすぎる頼もしい声に言葉。それに思わず顔を上げると、あの時と同じ……私の面倒を見ると言ってくれたその時と同じ、輝かしい笑顔で工が私を見ていた。
「ここにいるみんな、全員優しい!だから大丈夫!」
「!」
工のその言葉に脳裏をよぎったのは、大婆さまの言葉だった。
「これはわたしの勝手な願いだが、お前には人間と仲良くなって欲しいと願っているんだ」
「どうして、ですか……?」
「それは、わたしがまた、妖怪と人間が共存出来る日を夢見ているからだ」
(そうだ。私がちゃんとしなければ、みんなは離れてしまう。でもちゃんとすれば、必ず誰かが応えてくれる!)
自然と滲んでいた目を擦り、視線を工に向ける。そして口パクで「ありがとうございます」と告げたら、分かってくれたのか白い歯を見せて笑い、親指を立てた。まるで頑張れ、と言うみたいに。
そのおかげで勇気が湧いてきて、私はみんなを見渡してからはっきりと言った。
「白鷲真白と言います!1週間という短い期間ですが、みなさんと仲良くなりたいです!」
勢いよく頭を下げたら、まるで私を歓迎しますと言うように、教室が温かい拍手に包まれた。