第20章 潜入、白鳥沢学園3日目〜サトリ〜
「こんな時間に、こんな所でどうし」
ここにいるという事は、私に何か用事でもあるのだろうか。それは、こんな夜中に訪れなくてはいけないほどの火急の用事なのだろうか。
そう疑問に思い、覚さんと目線を合わせようとしゃがみながら聞こうとして、言葉が動きが途中で止まってしまった。何故なら––––
「…………」
覚さんのこちらを見る瞳がとても真剣みを帯びていて、どこか剣呑な空気が漂っていたからだ。
「っ……」
覚さんが怒っているところは何回か見た事がある。でも、どれもここまでの、息が詰まるような空気を出しているところは見た事がない。
そのせいで言葉が詰まり、思わず立ち上がって後ずさる。すると覚さんも静かに立ち上がり、空気をそのままに無言で近づいてくる。その様子が怖くて更に後ずさると、不意に背中が固い何かにぶつかった。それにハッとなって後ろを振り返ると、固い何かは壁で、これ以上は下がれないよと無情に告げていた。
どうしよう、と思う暇もなく、視界に伸びてきた腕が映り顔を上げると、予想以上に近くにいる覚さんの赤い瞳と目が合った。その近さに驚き身体を固まらせる事しか出来ない私に対して、覚さんは体勢をそのままに口を開く。
「ねえ」
「は、はい」
「聞きたい事があるんだけど、いい?」
「だ、大丈夫です…はい」
その聞きたい事を聞くのに、このままの体勢じゃないといけないのだろうか、と思いながらも頷く。そしたら、やはり体勢を変えずに覚さんは質問を重ねた。
「昨日のロードワーク中に、若利くんと工がよく分からない変な女に襲われたでしょ?」
「は、はい」
「その女について、何か知ってるんじゃない?」
「!?」
突然の核心をついた質問に動揺して、思わずビクリと小さく身体を揺らすと、やっぱりと言うみたいに覚さんの瞳が細まった。
「な、何を言ってるのですか?わ、私が知る訳ないじゃないですか」
「嘘だね」
「う、嘘なんて……っ!?」