第20章 潜入、白鳥沢学園3日目〜サトリ〜
「はああ……」
これほどまでに重いため息を吐いた事が、今まであっただろうか。
思わずそう疑問に思い、過去を振り返ってしまうほどのため息を吐きながら、私は重い足取りで暗い廊下を進む。目指すは自分の部屋だ。
素知らぬ顔で嘘を吐いた後、工は僅かに目を見開いてから視線を逸らし、何か考える素振りをした。でもそれは一瞬で、次には目を合わせて笑顔を浮かべながら言った。
『そっか…そうだよな!ごめん、変な事聞いて』
……笑顔と言っても少しぎこちない、無理して作ったような笑みだった。
「…………」
先程の様子を思い出す限り、きっと工にはまだ納得しきれていないところがあるのだと思う。でも、「今回会うのが初めて」だと言い切った私の手前、言い出す事が出来なかったのだろう。
……そう、それでいい。そのまま口に出す事なく終わり、そのまま忘れてしまえばいい。それが1番いいに決まってると思うのに、その事をどこか寂しいと思ってしまう自分もいて。
自分の気持ちの筈なのに、矛盾してしまう今の気持ちが全然理解する事が出来なくて、思わず二度目の重いため息を吐きそうになったその時
「……?」
自分の部屋の前に誰かがいるのに気が付いた。
最初はまだこんな時間だから見間違いだろうと思ったけど、暗闇に慣れた目ははっきりと人影を映しているし、何より少し距離があるとはいえ人の気配を感じる事が出来る。だから、間違いなく誰かがいるだろう。
(でも、誰だろう……?)
工とは先程食堂で別れたから、工以外の誰かだという事は分かる。では誰だろう?、と疑問に思いながら少し歩くスピードを速めて近づくと、その人は座りながらドアに寄りかかり顔を俯かせていた。
……顔は俯いているせいで見えないけど、あの赤い髪は私が知る中で1人しかいない。
「覚さん」
前に立ち確信を持って小さく呼びかけると、やはり合っていったみたいで顔を上げたその人は覚さんだった。
……いつもは髪を逆立たせているところしか見た事がないからか、髪を下ろしている姿を見るのはとても新鮮で、普段より幼い印象を受ける。