第19章 潜入、白鳥沢学園3日目〜真夜中の食堂〜
「どうしたんだ?座らないのか?」
「あ、いえ…座ります……」
工に促され、私は赤くなっている顔を見られないように、少し俯きながら椅子に座る。そして、気付かれないように工の顔をチラリと見る。
……自分が先程呟いた言葉を私に聞かれていないと思っているのか、それとも呟いた事自体気付いていないのか、どちらかは分からないけど、彼に恥ずかしがる様子は見られない。それどころか、これから質問する事に緊張しているのか、少し顔を強張らせている。
(……さっきは、私の頭を撫でた事や手を握った事に顔を赤くしてたのに……)
自分は工のせいでこんな風になっているのに、と恨めしく思うと同時に、工の恥ずかしがる基準が分からないと思った。
小さくため息を吐いて、何となく目にしたコーンスープ。
最初は湯気が立っていたけど、今ではもう冷めてしまったのか、湯気が立つ事はなかった。
「え……」
工から少し緊張した面持ちで質問されたけど、私は内容を理解出来ずにいた。……いや、理解したくなかったのかもしれない。
(工は今、何て言った……?)
心の中で自問するけど出てこない。先程聞いたばかりだというのに、靄がかかったようにぼやけてしまう。
だから私は、勝手に震え出す身体や唇にグッと力を入れて聞き返した。
「ご、ごめんなさい、工…。もう一度言ってもらえませんか……?」
「え……」
すると工は途端に不安そうにする。私にドン引きされていると思っているのだろうか。……違う。違うけど、今の私には否定する余裕がなかった。
ただただ、自分の耳に神経を集中させて、これから言ってくれるだろう質問の内容を聞き漏らさないようにする。
「わ、分かった。……えっと、俺、真白の事知ってるような気がするんだけど、どこかで会った事あるか……?」
「っ……!?」
––––ガツンッ!!
そんな音が頭の奥で響き、強く頭を殴られたような衝撃を受ける。きっと、今の私を側から見たら、大きく目を見開き顔を強張らせている事だろう。……それだけ強い衝撃を受けたのだ。