第19章 潜入、白鳥沢学園3日目〜真夜中の食堂〜
ポスリと工の頭の上に手を置き、なるべくゆっくり優しくを意識して撫でる。工が落ち着くのを促すように。
その瞬間彼の身体がビクリと揺れ、俯かせていた顔をゆっくり上げてこちらを見てきた。やはり突然で驚いたのだろう、目は見開かれていたけど、先程のような尋常じゃない様子は見られない。……どうやら、工にも効果があったみたいだ。
「……落ち着きましたか?」
その事実にホッと安堵の息を吐いてから確認のために聞くと、工は1回目をパチクリさせてからゆっくりと頷いた。それを見て、またホッとしながら頭から手を離す。
「よかったです。……私も、色々な人から頭を撫でられて、好きだなぁと思うだけでなく、落ち着くなぁとも思っていましたから。だからやってみました」
工にとっては突然の事だったのだ。だから簡潔に説明すると、何故か工は小さく目を見開いた後、胸に手を当てながらまた顔を俯かせてしまった。
私の説明に何かを言うでもなく、そんな仕草をした工が心配になり、どうしたのかと聞こうと口を開いた直後だった。
「誰?」
顔を俯かせたまま、彼がそう静かに疑問を口にしたのは。
「えっ……」
(誰……?)
誰とは……誰だ?
工の聞きたい事がよく分からず、首を傾げながら考える。その末、1つ思い当たる節があった。
「も、もしかして、私の頭を撫でた人は誰か聞いているのですか……?」
私は工の頭を撫でた理由を説明する際、「色々な人から頭を撫でられて」と言った。もしかして、その事を聞いているのではないだろうか。
聞くと、どうやら正解だったようで、工は未だに顔を俯かせたままコクリと小さく頷いた。
「え、えっとですね……鍛治さん、獅音さん…あと賢二郎さんと太一さん、ですかね」
……正直、どうして工がそんな質問をしてきたのかは分からない。分からないけど、頭の中で撫でた人達を思い浮かべて、指折りしながら名前を言っていった。……合計で4人だ。
言い忘れた人はいない筈と思いつつ、自分の記憶力を心配しながら工の返事を待つ。でも、少し経っても工からの返事はない。