第19章 潜入、白鳥沢学園3日目〜真夜中の食堂〜
「工!」
「!?」
ならばと思い、今度は先程よりも大きな声で呼ぶと、工はビクリと肩を揺らし慌てた様子でこちらを振り返った。どうやら予想通り、工は私の最初の呼びかけに気付いていなかったらしい。
「真白…!?ど、どうしてここに……!?」
「えっと、先程までは寝ていたのですが、目が覚めてしまって…。それで何か温かいものでも飲もうかと、食堂に来ました」
「そ、そうなんだ……」
「工はどうして食堂に?」
私の何気ない質問に、工は言いづらそうに顔を背ける。その様子を見て、私は慌てて首を横に振った。
「あっ!?言いたくないのなら、無理に言わなくても大丈夫ですよ!」
「あ、いや…言いたくないというか………実は俺、この時間帯になっても中々寝つけなくて……」
「え…そうなのですか……?」
「うん…。だから真白と一緒の理由でここに来たんだ」
「そうだったのですね」
工から食堂にいた理由を聞いて、頷きながら考える。何故工は中々寝つけないのだろうかと。
でもすぐに思い至った。部活の時間、工はロードワーク中に天孤に襲われた。私があの時間に合わなければ、若利さんだけじゃない、工も死んでいたかもしれない。そんな非現実を体験、生死を左右する思いをしたのだ。中々寝つけなくて当然だ。
(なら……)
私は受け取り場所から離れ、厨房の中に入る。そして工の隣に立ち台の上を見ると、これから作って飲もうとしていたのだろう、コーンスープの素が入った袋とマグカップが置いてあった。
それを確認して、私は工を見上げる。
「あの、工が嫌じゃなければ、このコーンスープを食堂で一緒に飲みませんか?」
「えっ」
もしかしたら違う理由で寝つけないのかもしれないけど、もし本当に私の考えがあっているのなら、1人でいるより2人でいた方がいいと思ったのだ。そしたら色々と話す事で気が紛れて、天孤に襲われた事を忘れる事は出来なくても、少なくとも考えなくて済む筈だ。
どうかなと思いながら驚いている工を見つめていると、不意に工は顔を俯かせた。その様子を見て、駄目だっただろうかと不安になる。でも次には顔を上げて、こちらを笑顔で見てきた。