第17章 潜入、白鳥沢学園2日目〜天狗のお面〜
「いや、礼を言うならむしろこっちの方だ」
「え?」
はて、私は鍛治さんからお礼を言われるような事をしただろうか。
……駄目だ。特に思い当たらない。
そんな私に気付いたのか、鍛治さんは小さく笑うと、消毒液などを持ってこちらに近づいてきた。
「若利と工を庇った白鷲ってぇのは、真白…お前だろ?」
「!……はい。本当に間に合ってよかったと思います」
今でも、あの光景を思い出すだけで肝が冷える。本当に間に合ってよかった。
私の言葉に鍛治さんは頷くと、近くの机の上に消毒液などを置いてから、私の頭に手を置き優しく撫でてきた。
……何だか、この数日で色んな人達から頭を撫でられているような気がする。私の頭は撫でやすいのだろうか。
でも嫌じゃない。むしろ頭を撫でられる事が好きになってきたように感じるほどだ。
緩む頰をそのままに、その行為をほくほくしながら受け入れていると、鍛治さんは言った。
「怪我を負ってまで、若利と工を庇ってくれてありがとな」
「!」
そう言った鍛治さんの表情はとても優しいもので、若利さんと工を……いや2人だけじゃない、他のみなさんの事も大事に思っているのだと分かる。ひとりの生徒として、バレーの選手として。
鍛治さんは確かに厳しいけど、でもそれに負けないくらい優しさも持っている、とても素敵な先生であり監督だ。
「どういたしまして、です!」
だから、ここで「いえ、そんな事ありません」なんて言うのは何だか無粋に感じて、私は鍛治さんのお礼に笑顔で返した。
「それで、あいつらが言ってた変な女……妖怪の事だが」
「あ、名前は天孤と言います」
「天孤か……それじゃあ改め、天孤の事だが」
「はい」
「俺は、もしかしたらお前が捜してる黒鷲と何か繋がりがあるんじゃねぇかと思ってる」
「え!?」
腕の手当てをされながら、私は鍛治さんのその言葉に驚いた。
「ど、どうしてそう思ったのですか?」
「……正直に言って、俺にも分からねぇ」
「え!?」
「ただ、「天孤は妖怪か?」と視線で聞いてお前に頷かれた時、真っ先に思い浮かんだのが黒鷲だったんだよ」
「…………」