第17章 潜入、白鳥沢学園2日目〜天狗のお面〜
(……え)
重苦しい空気が、主に賢二郎さんの言動のせい…おかげで緩和されたけど、私はそれどころではなかった。
(天孤が工と牛島さんの名前を知っていた……?)
彼らが嘘をつく訳がないから、本当なのだろう。でもそれなら疑問が残る。それは、何故天孤が2人の名前を知っていたのかだ。
偶然耳にしたのか、それとも誰かに教えてもらったのか、或いは最初から知っていたのか。
(うーん……)
考えすぎて頭がパンクしそうだ。ここは、自分の頭のためにもいったん考えるのをやめた方がよさそうだ。
そう思い、みなさんの方に視線を向けた。
彼らの状況報告が終わり、鍛治さんは何か考えるように目を閉じる。少しの沈黙の後、最初に口を開いたのは明さんだった。
「鷲匠監督。彼らが嘘をついてるとは思えませんし、ここは賢二郎の言う通り警察に連絡した方がいいんじゃないでしょうか?……何かあってからでは遅いですし」
……明さんの言っている事は、人として正しい選択だろう。
(でも……)
「!」
とその時、目を開けた鍛治さんの視線がチラリとこちらに向いた。そしてその目が語っていた。「その変な女は妖怪か?」と。
その問いかけに、私はみなさんに気付かれないように小さく頷く。そしたら、鍛治さんは一瞬目を細めてから視線を前に戻し口を開いた。
「警察に連絡はしねぇ」
鍛治さんがそうきっぱりと口にすると、みなさんからざわめきが起こった。
「うえ!?ちょ、鍛治くん正気!?若利くんと工が危険な目に遭ったのよ!今警察に連絡しなくていつするの……!」
「……「今でしょ」って言って欲しいのか」
「そうだよ!ちなみに今のはネタを振ったわけじゃないからね!」
「んな事は分かってる。だが……」
鍛治さんはそこで言葉を切ると、みなさんの顔を見渡した。
「……俺もお前らが嘘をついてるとは思ってねぇよ。だが、それを話したところで警察が信じると思うか?」
「っ……」
その言葉にざわめきが収まり、次にはみなさん悔しそうに下唇を噛んで顔を俯かせてしまった。