第17章 潜入、白鳥沢学園2日目〜天狗のお面〜
段々と見えてくる光景に驚き、動揺し、肝が冷え、思わず体が止まりそうになる。でも「止まってる場合じゃない!」と心の中で自分を叱咤して、私の持てる最大限の速さで飛ぶ。
(間に合って……!)
顔に痛いぐらいの風を受けるけど、それらを無視して飛び続ける。……ここで間に合わなければ、私は絶対後悔するから。
そして工の横を通り抜け、妖怪の手が若利さんに触れる直前、何とか自分の体を間に滑り込ませる事に成功した。
「っ……!」
その瞬間、翼に鋭い痛みが走り少しの血が飛び散った。でも、そんなのは気にならない。だって、若利さんを守る事が出来たのだから。
幸い傷は浅かったらしく、少し痛いだけで問題なく飛べる。その事にホッと安堵の息を吐いてから、視線を前に移した。
「白鷲さま……!」
天狗のお面のせいで表情は見えないけど、私を呼んだその声は酷く動揺しているみたいで震えていた。
……私だってそうだ。何故彼女がここにいて、何故若利さんと工に襲いかかったのか。
「っ……!」
「!」
そう疑問に思いながら天狗の妖怪……天孤(てんこ)を見つめていると、突然踵を返して走り去ってしまった。その姿を見て追いかけようと思ったけど、その前にと後ろを振り返る。
まだ自分達に降りかかった出来事を処理しきれていないのだろう、若利さんは立った状態、工は座り込んだ状態で呆然としていた。……無理もない。彼らにとっては非現実な事だったのだから。
しかも若利さんに至っては、頰に先程怪我した私の血が付いていた。……本当なら声をかけたり、その血を拭ったりしたいけど、この姿ではそんな事は到底出来ない。
(ごめんなさい……!)
だからとは言わないけど、私は心の中で工と若利さんに謝り、天孤の後を追いかけた。