第17章 潜入、白鳥沢学園2日目〜天狗のお面〜
「ふふふ!」
「「!」」
前にいる人物が肩を揺らして笑い出したのは。
お面を被っているせいか、少しくぐもった笑い声が辺りに響き渡る。やはり女みたいで、その声は高かった。
「ヒィ……!」
不気味な笑い声に恐怖し、五色は思わず牛島の後ろに隠れる。だがすぐに我に返り、誤魔化すように咳払いをしながら慌てて出てきて牛島の横に立った。そして突然笑い出した女に抗議しようと口を開くが、その口から音が出る前に女が先に言葉を発した。
「初めまして。牛島若利さんに、五色工さん」
「……え?」
何故見ず知らずの人が自分達の名前を知っているのか。
そう疑問に思い聞こうとするが、今度はまるで庇うように前に出た牛島に遮られた。
「下がれ、五色」
「っ、牛島さん……?」
ことごとく自分の言葉が遮られ、微妙な気持ちになる五色。だが、牛島から静かに言われた言葉に困惑し見上げると、表情は先程よりも険しく、明らかに前にいる女を警戒していた。
空気が、張りつめられていく。
「……何故俺達の名前を知っている」
「私だって、人間の名前なんて覚えたくないけど、あの方の為だもの」
(あの方?……って誰だ?)
女の言う、『あの方』とは誰の事を指しているのか。
そう疑問に思う五色だが、牛島は違うところを疑問に思ったのか、少し首を傾げながら口を開いた。
「? 何を言っている。お前も人間じゃないのか?」
「………は?」
「「!?」」
先程までの高い声が嘘のようなドスの利いた低い声を女が零した瞬間、牛島と五色はこの辺り一面の温度が下がったような感覚に陥る。何故なら、前にいる女の雰囲気が一瞬にして冷ややかなものに変わったからだ。
その事実に思わず2人同時に固唾を飲み込んでいると、女が少し前屈みに上半身を倒した。その瞬間––––
「「!?」」
人間には絶対にあるはずのない『翼』が背中から生えてきた。