第1章 story Ⅰ
「こっち。」
「あ?…ああ。」
浅見に言われるがままエレベーターに乗り、最上階へと動き出した。浅見の部屋なのだろうドアの前まで来ると、浅見はドアを開き瑞希を入れた。その動作は、馴れているかのような自然さがあった。
部屋に入ると瑞希は絶句した。その部屋は凄く綺麗で広すぎるくらいに広い。リビングだけで何畳あるのか分からないぐらいだ。しかも、生活感がまるでなく、ただ寝に帰るだけの部屋という感じだった。
「社長になるとこんな所に住めるんだな。」
「俺、頑張ったからね。」
元受刑者がここまで這い上がるのは並大抵のことではない。普通は就職することすらままならないのに、浅見はどれだけ努力をしたのだろう。きっと想像を絶する苦労をしたに違いない。
さすが最上階。景色が良い。
瑞希は窓から外を見ていると、リビング中に珈琲の良い香りがしているのに気付いた。