第1章 story Ⅰ
「久しぶりだな浅見。今、何してんの?」
「…ん?今は会社立ち上げて、社長してる。」
例え前科があっても、2年以上何事もなければ一般人と同じ扱いを受けれる。だから、自分で会社を作ることも可能なのだ。
「凄いな!浅見はやれば出来る子だって思ってたよ。」
「それはどうも。」
浅見は、運ばれてきた珈琲に砂糖を入れてスプーンで混ぜ始める。珈琲には口をつけず端に寄せ、両肘をテーブルに付き手を組んだ。
「鷹は未だにそのしゃべり方なんだね。」
「それは、女らしく話せと言っているのか?」
「別に?」
「ハハ。やっぱり男の中で働くと、なめられないように言葉使いでも威圧感を出さないと駄目なんだよ。」
「フフ。「威圧感」ねぇ~?」
「アハハ。威圧感など無いと笑っているのか?」
浅見が言うと嫌味には聞こえなかった。そこが浅見の凄いところで、声のトーンといい、間の取り方といい、耳に入ってくるその言葉は瑞希の心を穏やかにしてくれるものだった。