第3章 story Ⅲ
信号が青に代わり、車が少しづつ加速をしてゆく。
「な、何怒ってるんだよ?…何か気に触ること言ったか?」
「いや、別に?」
今までに聞いたことのない低い声を出す浅見に、瑞希は恐怖を感じた。
何だかんだいって浅見が刑務所にいた頃からの長い付き合いだが、一度も怒っている姿を見た事は無い。
瑞希は違う話でこの空気を変えようと思ったが、家の道筋を指示する他は何も話せなかった。
__きっと、私が何か言ったんだな…。理由は分からないにせよ、謝った方が良いのか?__
もう一度浅見の顔を見るが、苛立ったままだった。瑞希はドアに片肘を付き、外を眺めながら考えていると、気付いた時には瑞希の家に着いてしまっていた。裏通りだからか、外には誰も歩いていなく、雨だけが降り注いでいる。