第3章 story Ⅲ
「その顔の怪我どうしたの?」
「…え?」
急に話をかけられ浅見の方を振り向くと、ただ真っ直ぐ前を見たままで、こっちを見ようとはしなかった。
「…あ、これか?これは夜中に喧嘩があって…、その時に…。」
ふと絆創膏を触ると、せっかく貰った絆創膏を張り替えていない事に気が付いた。鞄の中から新しい絆創膏を取りだし張り替えていると、浅見はチラリと横目で見る。
「へぇ。替えの絆創膏持ってたんだ。」
「あ、ああ。持ってたっていうか、カフェのウエイターさんがくれたんだ。親切な人だよな。」
浅見はハンドルを握りながら、人差し指でトントンとハンドルを叩く。浅見の表情からは何を考えているのか分からなかったが、明らかに苛立っているのが分かった。