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be taken prisoner

第3章 story Ⅲ


「…これは酷いな…。」
「はい。傘もないし、どうします?」
「小林は官舎だろ?走ればすぐ着くから良いな。」
「いや、俺の事はどうでも良いんですが、鷹島さんが…。」
「私の事は気にするな。じゃ、また明後日な!」
「え?!ちょ、鷹島さん__」

瑞希は上着を傘代わりに走り出す。少し風も出てきて、顔に雨が当たるも気にしてられなかった。すると、カフェが見えてきて堪らず中へ入った。そのカフェは瑞希のお気に入りのカフェでもあり、浅見と出会った場所でもあった。

ハンカチで体を拭きながら珈琲を頼むと、いつもの窓際の席についた。空いてる席に鞄と濡れた上着を置いて、携帯をテーブルの上に出した。すると、珈琲が運ばれてくる。

「凄い雨足になって来ましたね。」
「ええ、そうですね。こんなびしょ濡れですいません。」
「いいえ。これをどうぞ?」
ウエイターはそっと絆創膏を差し出す。

「…ありがとうございます。」
「いいえ。」
微笑みながら、一礼してカウンターへと戻っていった。雨で濡れた絆創膏を、なにも聞かず替えを用意してくれるなんて、どれだけ紳士なのだろう。


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