第3章 story Ⅲ
自分の気持ちに気づいたというのに。「友達」と言ったのは自分じゃないか。変なプライドのせいで一歩も動けないなんて。
「…はぁ。」
椅子の背もたれに寄り掛かり、ため息をつき天井を見上げた。すると、仔犬のようにしゅんとした顔で小林は瑞希に話し掛けてくる。
「やっぱり、鷹島さんだって女性ですもんね…。顔に傷が残るかどうか気になっちゃいますよね?」
「は?何が?」
「あ!でも、例え傷が残っても、俺は全く全然ちっとも気にしませんから!」
ああ、まだその話の続きがあったのかと思っていると、小林が顔を赤くしながら真剣な顔で見つめてきた。瑞希は机に両肘を付き、ジッと小林の目を見つめ返す。
「小林って良い奴だよな。お前は今付き合ってる女性はいるのか?」
「…え?!い、いませんよ?!ただいま募集中です!」
慌てているせいか挙動不審な動きをする小林に、思わず笑ってしまう。