第3章 story Ⅲ
「ツイてないですね、鷹島さん。」
小林は心配そうな顔をして、瑞希の口元の絆創膏を見つめた。
「ああ、本当にツイてない。」
ため息混じりに腕くみしながら言う。
「俺がいながら怪我負わせちゃってすいませんでした。」
「何で小林が謝るんだよ。つーか、元はと言えば、あいつらが夜中に喧嘩なんぞするからいけないんだ。」
「そりゃそうですけど…。もし、顔を傷が残ったら…。」
刑務官が喧嘩を止めるのに怪我を負うのは珍しいことではない。
小林は心配性だなと思いながら、待機室の窓から外を眺めた。昨日は良い天気だったものの、今日は朝からバケツを引っくり返したようなどしゃ降りの雨。血の滲む絆創膏を取り替えて乾燥させたいが、この雨じゃ湿気で無理だろう。
__雨は嫌いだ。一人でいるのが嫌になる___
瑞希は、外から携帯へと視線を移した。
この携帯には浅見の番号が入っているが、交換した日から一度も鳴ったことが無い。それは浅見も同じで、瑞希からも電話をしたことが無かった。