第2章 story Ⅱ
部屋の前まで来ると、浅見がドアを開けて待っていた。
「鷹、いらっしゃい。」
「浅見。」
体の中から警戒音が鳴り響く。早く帰った方がいい、早く帰った方がいいと鳴り響く。
玄関まで入ると、瑞希は浅見と目を合わさず胸に花束を押し付けた。
「これ、所長からお祝いの花束だ。新聞に載っていたから。」
浅見は花束の香りを楽しむ。横目で見ると、その動作だけでも目を奪われそうになった。
「…じゃあ、仕事頑張れよ。」
すぐ帰ろうとドアノブに手を掛けた瞬間、浅見は強引に瑞希の体の向きを変えさせ、向き合った所でドアに押し倒した。花束が落ち、花びらが床に散らばる。
瑞希は驚きのあまり顔を上げると、微笑む浅見と目が合った。