第2章 story Ⅱ
受刑者の入浴が終わり、待機室に戻ると夕方になっていることに気付た。瑞希は報告書を纏(まと)めていると、所長の大橋(おおはし)刑務官に呼ばれる。
「何でしょうか。」
「お前、今の浅見恭一を知ってるか?」
指先が少し反応するが、平常心で受け答えをした。
「今の浅見恭一ですか?」
「ああ、これを見ろ。」
大橋は机の端に置かれていた新聞を広げ、一つの記事に指をさした。それを見た瑞希は目を見開く。
「これは…。」
「浅見恭一の会社についての記事だ。元受刑者が社長だなんて、良くここまで這い上がったもんだな。」
大橋は笑いながら煙草に火を付けた。周りが忽ち煙で白くなり、瑞希は噎(む)せそうになるのをジッと堪える。