第8章 月が綺麗ですね
可愛いを連呼してパレードを鑑賞して、ガラス細工の店に行って名前入りのグラスを自分への土産にした清はナルと船の中にあるレストランに入った。
少々お高めの値段設定だが、操のクレジットカードがあるから支払いも怖くないのだ。
操に似て酒には強い清は赤ワインを飲みながらご機嫌だ。
「今日はありがとね、ナル!すごく楽しかったよ!」
そうニコニコ笑う清に「別に」とナルはそっけない。
「滝川さんや安原さんにも会えてすごい偶然…。でも友達は大事にしなきゃ。あの女の子達あの後会わなかったけど、今度は謝った方がいいよ」
ナルは嫌そうに顔をしかめた。そもそも友達ではない。
「…苦手なんだ、原さんは。それに彼女の期待には僕は応えられないから」
さすがのナルも何年もアプローチされていれば、真砂子がナルにどういう感情を持っているかわかる。
だからこそ、プライベートの付き合いはなるべく持ちたくなかった。
「んー?」
清は納得していない様子でナルをじっと見る。
「……考えておく」
もうすぐ花火の時間。
夜の空には満ちた月が昇っていた。満月まではもう少し。
「わっ…」
「ほら」
空を見て階段を踏み外しかけた清の手を取る。
「さすがイギリス紳士!」
(酔ってるな…)
ほろ酔いの清を腕に掴まらせて、夢の国を歩く。
「風が気持ちいいねー」
「ああ」
パンフレットに載っていた花火が見える場所まで来ると、二人で空を見上げた。