第9章 満月の夜に(終)
「………愛してる。
清も、ナルも、ルエラも、マーティンもみんな。もう僕は一緒にはいられないけど、それだけは伝えたかった」
「…私もだよ。愛してる、ジーン」
清の瞳からは涙が止めどなく流れ、頬を伝った。
こんなに優しくて哀しい愛の言葉なんて他にない。
「泣かないで…」
ジーンは清の涙を拭おうと手を伸ばす。
清はハッとして「やめて」と声に出した。
知っている。ジーンが自分に触れたらどうなるか。ここで会えたのもきっと奇跡なのに。
「嫌だよ、触らないで……」
それでもジーンは手を伸ばしたまま、優しく微笑む。
ジーンも知っているのだ。清に触れるとこの時間は終わってしまうことを。
「大好きだったよ…、清」
それが彼の最後の言葉、最後の笑顔、最後のぬくもり。
月明かりに照らされて桜の花びらが舞う庭に立っているのは、清ただ一人だった。
これは夢か現か幻か。
いいえ、この世こそ夢そのもの。
END