第8章 月が綺麗ですね
朝6時。チャイムを連打する音で叩き起こされたナルは不機嫌だった。
起こしたのは他でもない清である。
ばっちりメイクをした彼女にナルが最初に着替えた上下黒の服はあっさりダメ押しされ、黒服だらけのクローゼットはドン引きされた。
仕方ないから夢の国で買えばいいかという清。夢の国がどんな所かもわからないのに、嫌な予感しかしない。ナルはベージュのアンクルパンツと白地のTシャツ、グレーのパーカーを探し当て急いで着替えた。
普段着を入れておいてくれたルエラには感謝しかない。
朝食の後、8時にはホテルを出てバスに乗るハメになった。
ガイドブックを片手にワクワクするのが隠せない清を横目にナルは眠たくて仕方ない。
「一体何時まで起きてたの?早く寝てって言ったじゃん」
僕は別に行きたいわけじゃなかったと言おうとしたが、寸前で止まった。ここで清を怒らすのは得策じゃない。
ジーンがいたらこんな役割押し付けてやるのに。彼なら二つ返事で清と出掛けるだろう。