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ヤドリギ【ゴーストハント】

第8章 月が綺麗ですね



清が最初に訪ねたのは、リンだった。
チャイムを押すと、数秒して相変わらず前髪を伸ばして半分隠れた顔を出した。

「清、ナルは隣ですよ」
「知ってるよ。先にリンに挨拶に来たの」
なんだかナルに会うのが気恥ずかしくてとは言えなかった。
「それはどうも…。観光を楽しんで下さい」

特別親しい間柄でもないリンとの会話は数分で終わった。
清は隣の部屋に目を向けた。ノックするのをためらっていると、ゆっくりドアが開いた。

「……ここで何してる?」
「…あ、ナル、こんばんは。どこか行くの?」

飛行機はとっくに着いた時間なのに、なかなか連絡がないからロビーにでも出ようとしていただけ。
ナルにとって心配という感情を感じる人物は限られている。

「…別に」
「じゃあ、夕食まだなんだ。付き合ってくれる?」


初秋の東京の夜の空気は生温い。
一応ナルにおすすめの店を聞いてみたが、期待に反せず彼が教えてくれることはなかったので近くのファミリーレストランに入った。

「……何しに日本に来たんだ?」
「観光に決まってるじゃん。3日後には京都に行くの。純礼さんに会いたいって言われてるから」

純礼とは清の名付け親の尼僧のことである。俗名をすみれ、法名はじゅんれいと読む。
母の同級生である彼女は京都にある実家の寺を継いでいる。

今回の来日は純礼に誘われてのことだった。
だから東京観光はついでで、清の一番の目的は京都にあった。


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