第7章 くろねこ再び
「にゃー」と猫の鳴き声がする。
足元を見るといつか見た黒猫がいた。
「清、ごめんごめん。別にナルを責めてる訳じゃないんだよ。ただ僕も一緒に行きたかったなって」
ジーンは黒猫を清と呼んだ。
(ばかばかしい。そんなことあり得ない)
黒猫はジーンに向かって何度かにゃーにゃー鳴いた。
まるで「ちゃんと仲良くして」と言っているように。
「仲良くするよ。ただ二人だけでディナーに行くなんてやっぱりずるくない?」
黒猫は色素の薄い瞳で困ったようにナルを見上げた。
夢の中とはいえ、起こっている出来事がぶっ飛びすぎて頭が痛い。
ナルはため息を吐きながら黒猫を抱き上げる。
いつかのように黒猫をポンとジーンの頭に乗せた。
「うわぁぁぁぁ!!だから何でこうやってするんだよ!僕だって誕生日おめでとうって言われたいだけなんだ!!」
(もうさっさと成仏してくれ……)
「………もう、ナル起きて。早く行こうよ〜。お腹空いたんだけど」
「……清?」
目を開けると人間の清がいた。
窓の外はもう真っ暗で彼女はカーテンをさっと閉める。
(いつの間にうたた寝を……?)
また変な夢を見た。誕生日の度にジーンは夢に出てくるつもりなのだろうか。