第7章 くろねこ再び
「誕生日おめでとう!ナル!」
目の前に腑抜けた笑顔の自分そっくりの人間がいた。ジーンだ。
「…お前まだ成仏してないのか?」
「やだなぁ、誕生日だから祝いに来たんだよ。そういえば清と夢の国楽しかった?」
嫌味ったらしくそう言われて、ため息がこぼれる。
「……プライバシーの侵害だな」
「いいなぁ、ナルは。清と上手くいってて」
聞き覚えがある記憶に頭が痛くなる。確か前も似たような夢を見た気がする。
「清に祝ってもらいたいなら、そっちへ行け」
「だから強制浄化されちゃうから無理なんだってば…。でもトライはしてみたんだけどね」
ジーンはそう言って苦笑する。
清の夢に何とか入り込めないか彼なりに試したが、結界のようなものがあり無理だったらしい。
「あー、清に会いたいな。プレゼントもらったり、一緒にケーキ食べたりしたいじゃん?」
「無理なんだろう。大人しくしておけ」
「ナルは二人でディナーに行く予定なのに?」
そう言われてギクッとした。今夜は週末にはイギリスに帰国する清とホテルのレストランに行く予定だ(操が予約していた)。
「あー、うらやましいなぁ。……入れ替わったりしてくれないかな」
ジーンは怨念を背にぼやいた。
「入れ替わるじゃなく、乗り移るの間違いだろう」
「ナルに憑依するのって超難関じゃん。あの狐の霊ってすごかったんだね」
古傷をさらりとえぐられた。
どうやら余程清と食事に行くことが気に入らないらしい。