第6章 くろねこ(ツインズ誕)
ますます、馬鹿げている。
「ジーン、お前がしてみろ。僕は関係ない」
「またまた。僕はこれ以上清の方には近づけないんだよ。強制浄化されちゃう」
むしろその方がいいではないか。
「それにクリスマスの日のこと、僕が知らないとでも?」
「……あれはッ!」
クリスマスの日、あのヤドリギの下での出来事は魔が差したとしかいいようがない。
まるで誰かに乗り移られて、勝手に身体を動かされたようだった。
「いいなぁ、ナルは。清と上手くいってて」
否、ジーンの策略だったのではないのだろうか。
「このままでいいはずないから、とりあえずキスしてみたら?」
自分にとってこれほどの無理難題はない。
相手が猫とはいえ、誰かに触れられることは苦手なのに。
「ジーン、覚えてろよ」
ナルはそばにいる黒猫を抱き上げる。
猫は嫌がるでもなく、ナルの様子を伺っているようだ。
「………」
猫にキスとかどうやるんだ。
動物を愛でた経験なんてないのに。
「………お前、本当に清か?…もしそうなら、目の前の目障りな霊を浄化しろ」
ナルは猫を抱いたままジーンに近づき、彼の頭の上にポンと猫を乗せた。
「な、なんてことするんだよ!ほ、ほんとにダメなんだってば!!わぁぁー!!!」
ジーンの悲鳴とともに彼の姿は薄くなっていき、見えなくなった。
「さっさと、向こう側に行けばいい」