第6章 くろねこ(ツインズ誕)
清の声ではなかった。
振り返ると、自分にそっくりな人物が立っていた。
「…ユー…、ジーン…」
言葉を失うナルに彼は何事もなかったように笑った。
「清を探しているの?清なら、その猫だよ」
「……そんなわけ、ないだろう。それよりも何でお前がここにいる?さっさと向こう側に行かないか」
行けるもんならとっくに行ってるとジーンは言った。
行こうとしても行けないのだと。
「霊媒が道に迷うなんて、お前はバカなのか?」
「そんなことより、清をどうにかしたくないの?」
ジーンはナルの後ろの黒猫を見た。
相変わらず、にゃーにゃー鳴いてナルの足に擦り寄ってくる。
「何で、この猫が清なんだ…」
確かに薄い茶色の瞳は彼女によく似ている。
だが、人間が猫になるなんてこれほど馬鹿げたことはない。
「でも、その猫は清なんだよ」
ジーンは同じ主張を繰り返す。
ナルは大きなため息を吐いた。
仮にジーンの主張が正しいとしてだ。
「…どうやったら元に戻る?」
「さぁ?キスでもしたらいいんじゃないの?」