第6章 くろねこ(ツインズ誕)
「……ナル。ねぇナル、起きて…」
目を開けると目の前に人間の清がいた。
なんだ…、今までのは、夢か。
「もうすぐルエラ達帰ってくるから…、それに…」
清は少し頬を赤らめてリボンのついた小さな箱を差し出した。
「お誕生日おめでとう。ナル」
そういえば、今日は9月19日。
誕生日なんてすっかり忘れてしまっていた。
「ああ。ありがとう」
その言葉に清は満面の笑みを見せた。
促されて、リボンを外して箱を開けると黒い万年筆が入っていた。
「トリニティ・ストリートの雑貨屋さんで見つけたの。最後の一つだったんだよ」
隣でニコニコする清。
さっきまでの夢はなんだったのか。
誕生日だから、ジーンは出てきたのだろうか。
だとしたら強制的に浄化したのは少し可哀想だったのかもしれない。
「今朝、ジーンのお墓参りもしてきたんだ。
……もし、夢の中で会えたらおめでとうって言ってあげられるのに」
「今度会えたら、清の夢の中に出るように言っておく」
「ナル、まるでさっきまでジーンと一緒にいたみたい」
清は少し寂しそうに笑った。まるで、自分にはそれは叶わないというように。
「ジーンがいなくても、僕がいる。来年も、その先も」
「ナル……?」
「ただいま。お留守番、ありがとうね」
「チャオ!清。あら、どうしたの?顔が真っ赤」
ルエラと一緒に家の中に入ってきたのは、まどかだ。
今日のバースデーパーティーに呼ばれていて早めに来たらしい。
リビングにはナルの姿はなくて、清がクッションを抱いてソファにちょこんと座っていた。
「…何でもない……」
来年も、その先も、って。
(ずっと……?)
END