第5章 彼の日常
「何の話してるんですかねぇ?」
「…少年、それが見たくて二人から離れたのか?」
少し離れた木陰からナルと清の様子を観察する二人。
「いやぁ、日本じゃ見れない光景でしょ。女の子と二人きりでお茶しながらベンチに座ってるなんて」
「確かにそうだけど…」
自分もまじまじと見てしまうが、麻衣や真砂子には見せられないと思ってしまうのだ。
セントジョンズを出て、土産物屋に立ち寄ればもう夕刻だった。
家族友人に土産を買った二人は清に頭を下げた。
「日下部さん、本日は本当にお世話になりました!」
「ナルちゃんもありがとなー。まさか土産物屋まで付いてきてくれると思わなかったよ」
ナルも一応通訳をしてくれて、女性の店員がそれは丁寧に接客してくれた。
ナルはため息で返事を返した。
清は最後まで感じがよくて、「いつまでイギリスにいるんですか?」と聞いた。
「四日後の朝にこっちを発つ予定ですね。本場のSPRも見学させてくれるらしいから、渋谷さんにもまた会えますね」
「ふふっ。よかったね、ナル」
別に会いたくないから、研究室に一人で篭っていようと誓った。
バス停まで二人を送り、手を振って別れた。
二人は充実した一日になったと満足感で一杯だった。