第5章 彼の日常
(朝から歩き回ったから、足が疲れたなぁ…)
天気は快晴。
湿度が低いイギリスでも夏の暑さが感じられる。
「ゴースト、やっぱり会えなかったね」
「別に正式な調査じゃないからな。問題ない。
でも、なんでガイドなんて引き受けた?」
「…ん。別に今日はナルを待つ間、用はなかったし。ナルが付いてきた方が不思議だよ。それに何で、英語で話しかけてくるの?」
別にどっちの言語でも意思は通じるのだが、普段は日本語なのに。
聞かれたくない理由でもあるのだろうか。
理由なんてない、とナルは言った。
ただ、自分がいない場所で清と滝川と安原が接触していたのが気に入らないと思うだけだ。
何故気に入らないのかわからないから、感情を持て余してしまう。
(……なんかやっぱり怒ってるみたい…)
ナルは理不尽に怒ったりしないから、何か理由があるんだと思うけど思い当たらないから困る。
「今日の夜もルエラとマーティンは遅いみたいだけど、晩ご飯も外で食べちゃう?」
「…あの二人も誘うつもりか?」
「ダメなの?」
ナルは返事もせずに立ち上がった。
全然機嫌が治らないと途方にくれる。
私なんかと一緒にいるよりも、能力がある人と一緒にいる方が楽しいはずじゃないの。
ナルを一般人と同じ尺度で測ろうとしても無駄だろうが。
「…清」
「はい、オリヴァー?」
「夕食は清が作ったものを食べる。外で食べるのも、ぼーさん達と食べるのも落ち着かないから」