第5章 彼の日常
午後からの予定はトリニティとセントジョンズのカレッジに行くことに決まった。
「もう1時だ。僕は図書館に戻る」
「トリニティ先に回るから、一緒に行くよ。ナル、今ちょうど1時?」
ナルは腕時計を清の方に向ける。時計の針はちょうど1時だ。
「私の腕時計、3分遅れてる…」
清はナルの腕時計を見ながら、自分の時計の針を直した。
((…あれ?お揃い…?))
一緒にトリニティ・カレッジに戻るとすぐナルは図書館に入っていった。
トリニティの最高傑作と名高いレン図書館の外観を写真に収めた後、三人は中に入った。
観光客も静かに見学している。
英文だらけでわけがわからないが、清が小声で説明してくれる。
どうやらトリニティが誇る人財の貴重な資料だということはわかった。
展示スペースから更に奥に進むと、学生達が利用する図書スペースがあった。
ナルが奥の一人用の机の所に座っている。
清が小さく手を振るが、あっさり無視されてしまった。
特に落ち込むでもなく、清は「ナルはいつもあの席に座ってるんです」と言った。
「やっぱりあの顔で図書館と博士はサマになるなぁ。でも、博士はトリニティよりセントジョンズに行きたかったんじゃないですかね?」
「ん〜、でもナルはトリニティって感じ」
「そりゃ頭いいもんな〜。トリニティ、ノーベル賞受賞者何人も出してるし」
「そうだけど、なんていうか…。ナルって変人でしょ?超常現象?そのことばっかりに固執しちゃって。トリニティは奇才とか変人のカレッジ」
((…あ、納得……))
三人は図書館を出て、時計台やチャペルがあるグレートコートをゆっくり散策してからセントジョンズ・カレッジに向かおうとした。
すると、門の前には図書館にいたはずのナルが立っていた。