第5章 彼の日常
「いい子ですよね、日下部さん。何て言うか、親切で癒し系だし」
ニマニマしながら安原が話に割り込んできた。
「僕、渋谷さんにあんな可愛い彼女がいるなんて知らなかったなぁ。遠距離恋愛ですか?」
ナルは安原の言葉をまるきり無視して、また本に目を落とした。
こんな連中と無駄な話をしていても意味がない。
清が戻ってくると同時に食事が運ばれてきた。
「日下部さん、さっき話してたゴーストが出るカレッジって?」
「ああ、セントジョンズでは何人もゴーストを見てるんです。私の友人も」
「へぇー、日下部さんも見たんですか?」
「私はゴーストが近づかない体質だから」
清はそう言って苦笑する。
ぼーさんが「どゆこと?」とナルに視線を送る。
「清を調査に連れて行くと現象が全く起きない、と操が言っていただけだ」
清の名前は操の知り合いの僧侶からもらったものだ。その僧侶に清には生まれつき浄化の力があると言われたらしい。
実際、清自身ゴーストを見たことがないし、清がいると心霊現象が起こらなくなるから、子供の頃から操の調査に同行したこともない。
別に心霊現象に興味はないから、困ったことはないと清は言った。