第1章 ヤドリギの下
放課後、双子は門の前で誰かを待っていた。
待ち人が来たことに気づいたのはジーンだ。
「清も一緒に帰ろう!」
「うん!」
二つ返事で彼らの隣に並んだ。
これがいつもの三人のルーティンだ。
「ねぇナル、あんまり入れ替わったらダメだよ。またルエラに怒られちゃうんじゃない?」
ナルはジーンの方を見る。
彼はバツが悪そうに舌を出した。
「ジーン、お前はすぐに見破られるな」
ナルの呆れた声。
「いや、清以外にバレたことはないんだけど…」
15分ほど歩くと清の家に着いた。
ディヴィス家はここの三軒隣だ。
「清、後で家に行ってもいい?」
「いいよ!今日はどこにも行かないから」
ジーンの誘いを快諾し、清は家に入っていった。
1時間程して、ジーンが家にやってきた。
どうやら彼は夏休みに調査を兼ねて日本に行くらしい。
そのために日本の地図や観光の本があったら貸して欲しいと頼んで来たのだ。
母の部屋を覗くと、いくつか観光の本があったのでそれを貸すことにした。
「お土産何がいい?」
「何でもいいよ。日持ちする方がいいから、おせんべいとか?」
わかった、とジーンは笑った。
「あのさ、清」
「…ん?何?」
「…やっぱり日本から帰ってきてからでいいや」
歯切れの悪い、意味深な言い方。
「気になるじゃん!何?」
そう言っても彼は何も教えてくれなかった。
どうしてそのとき、無理矢理にでも聞いておかなかったんだろう。
ジーンが、日本から生きて帰ってくることはできなかったのに。
今となっては後悔しかできない。