第3章 シンクロ〈new!〉
10分ほど帽子を探し回り、やっと木の枝に引っ掛かっているのを見つけた。
到底手が届く高さではない。
「僕が登って取ってくるよ」
運動神経はいい方だ。ジーンはためらいなく、木に登る。
「ジーン、気をつけてね!」
心配そうに見上げる清にジーンは笑ってみせた。
少しぐらい彼女に良いところを見せたいではないか。
(あと、少し…)
枝分かれした幹に足をかけ、枝に引っ掛かった帽子に手を伸ばした。あともう少しで届きそう。
思いきり手を伸ばすと指先が帽子に触れて、はらりと真下の地面に向かって落ちた。
(よし…)
そう思った瞬間、スニーカーが木の幹でずるっと滑った。
しまった、と思ったのも束の間、ジーンの身体は真っ逆さまに地面に落ちていく。
「ジーン!!」
「…ッ!!」
SPRにいたナルは急な頭痛に見舞われて、うずくまった。
(…あのバカ、何やってんだ…)
後頭部を何かで強打したような痛みを感じて、すぐにジーンの痛みを共有したのだと気がついた。
さっきまで気の抜けたふわふわした感情を感じ取っていたと思えば、今度は何事だ。
「ちょっとナル?大丈夫?」
近くにいた操が心配して駆け寄ってくる。
「ああ。…僕は」
後頭部を押さえてため息混じりにジーンとのホットラインをノックする。
(おい、ジーン!一体何やってる?返事しろ。
………ジーン?)