第3章 シンクロ〈new!〉
翌日、清とジーンは自転車に乗って出掛けた。
朝が弱いジーンが起きたときにはナルはもういなかった。マーティンとSPRに行ったらしい。
今日の予定はルエラの手作りサンドイッチを持って、公園でピクニックだ。
「美味しー!ルエラが作ると何でもおいしいね」
「僕達は恵まれてると本当に思うよ」
ぽかぽか陽気の公園で二人でサンドイッチを食べる。
孤児院にいるときはこんな生活が送れるとは思ってもみなかった。
食べる物に困らないし、ひとりの部屋を与えてくれて夜もぐっすり眠れる。学校にも普通に通えて、気の合う友人もいる。
(それに……)
ジーンは清をじっと見る。
その視線に気がついた清はジーンを見てにっこり笑った。
(かわいい…)
そもそもジーンが清と一緒にいることを好むのは気が合うのはもちろん、彼女といれば霊を見る心配がなかったからだ。
浄化の力を持つと言われる清に霊は近づけない。四六時中霊が見えるジーンにはありがたい存在だった。
でも最近、清と一緒にいると胸の奥が温かくなるような、ほのかに甘酸っぱいような、そんな気持ちになることがあった。
「ナルも誘えばよかったね」
他意はなく、清はそう言った。
こんな気持ちの良い日に部屋の中で心霊現象の研究なんてもったいないから。
ただ、いつになくひねくれたジーンはそうは思わなかった。
「清って、ナルのことーー」
その瞬間、強い風が吹いた。清のお気に入りの白い帽子が飛んでいく。
「待って…!」
慌てて清は帽子を追いかける。ジーンも急いでその後を追った。