第2章 秘密
(…ナル)
(…なんだ?)
(やっと、通じた。何回も呼びかけたのに。今から家に帰る)
(ああ、僕達もそうする)
マジックショップに来てから何度もホットラインを通じて意識をノックされていた。
煩わしいから無視していたが、窓の外は茜色に染まりはじめている。
「ヴィアニー、このカードを買って帰ります」
「ああ、もう遅くなってしまうね。君は特別だから半額だ」
ヴィアニーの「またおいで」という声に後ろ髪を引かれながら、2人はマジックショップを後にした。
「私、知らなかった。ナルがあんなに手品が得意なんて」
すごいねと、清は嬉しそうだ。
「ただ、パトロンを集めたいだけだ。金持ちはああいうのが好きだから。そうだ、これは返しておく」
ナルは清にキーホルダーを手渡した。
「ねぇ、また手品見せてくれる?」
「そうだな。今日のことを誰にも言わないならな。…ジーンにも」
バレたらマジックショップに連れて行け、僕にも見せろとうるさいだろう。
清なら店の中をキョロキョロするぐらいだし、ヴィアニーもたぶん気に入ってた。
何より彼女が喜んだ顔を見れる。
「わかった、秘密ね。じゃあ指切り」
何で指切りなんてしなきゃいけないんだと思ったが、口止めしたのは自分なので大人しく従う。
2人は小指を絡め合わせる。
それは2人だけの小さな秘密。