第2章 秘密
ナルについて行くと、繁華街の少し奥まったところにある4階建ての建物の前まで来た。
路地裏にあり、人通りは少ない。
清が少し不安げな表情をしていると、ナルはマジックショップだと言った。
彼は躊躇わずに階段を登り、2階にある扉の前で立ち止まった。
扉のガラス窓には「ヴィアニー」とだけ書かれている。
ナルが扉を開けるとドアベルが鳴った。
「おや、誰かと思えば珍しいね」
中にいた老人はそう言って、杖をつきながら近づいてきた。
「ナル、久しぶりだね。…おや、可愛いお嬢さんを連れているじゃないか。君も隅には置けないな」
「別に、ただの付き添いです」
ナルはぶっきらぼうにそう答えた。
「日本人かい?わしはジャン・ヴィアニー。手品師だよ」
ヴィアニーは白い歯を見せて笑って、杖を持っている逆の方の手を差し出した。
「ああ、はい。日下部清です」
そう答えて握手する。すると手に不思議な感覚がした。
手を離すと清の手の中には小さな猫のキーホルダーがあった。
何で、何で?
片手は杖で塞がっているし、握手するときも何も持ってなかったのに。
驚いて声が出せない清を見てヴィアニーは嬉しそうに笑った。
「お嬢さんにあげるよ。たまたま景品で当たったんだ。
ナル、今日もスライハンドの練習をするかい?それとも客として来たのかな?」
「その両方です」とナルは答えた。