第1章 ヤドリギの下
デザートのプディングを皆が平らげるとパーティーはお開きとなった。
夕方から降り始めていた雪は強くなる一方だ。
まどかとリンを見送り、そろそろ操を連れて家に帰らなければならない。
ソファで横になる操を横目にテレビを見ていると、ルエラに呼ばれた。
「ナル、清。私達からクリスマスプレゼントよ」
二人に渡されたのは赤いリボンでラッピングされた細長い箱。
中には腕時計が入っていた。
「わぁ!嬉しい!ありがとう」
「三人でお揃いよ。大事にしてね」
ジーンの写真の前にも同じ箱が置かれていた。
「よかったね、ナル」
「ああ。そろそろ新しいものが欲しかったところだ。ありがとう、ルエラ」
えらいぞ。ちゃんと息子くんできるじゃないか。
中々操が起きてくれないので、清は2階の窓から外を眺めていた。
雪はどんどん降ってきた。
明日は何㎝か積もっているだろう。
「まだいたのか?ここで何してる?」
とっくに部屋に戻っていたはずのナルの声。
「外見てた。明日はきっと積もってるよ。一緒に雪だるま作る?」
「僕に言ってるのか?」
「ナルしかいないじゃん。昔はよく雪合戦して遊んだよね」
子供の頃は雪が積もれば三人で外に出て、ジーンと清で雪だるまを作ったり雪合戦をして遊んだ。
無理矢理連れ出されたナルは外でも本を読んでいたが、ジーンが構わず雪をぶつけて業を煮やしたナルも雪合戦に参加するのがいつもの流れだった。
「……あの頃に戻りたいのか?」
「どうかな?ナルは?」
「僕は今の方がいい。好きなだけ研究ができるし」
相変わらずのワーカホリック。
「クリスマスって楽しい思い出がたくさんあるよね」
「さあな…」
ナルは窓の上に吊るしてあるヤドリギに目をやった。
そうか、ナルもヤドリギのことを覚えているんだ。