第1章 ヤドリギの下
クリスマスにヤドリギの下ではキスを拒めない。
西洋に伝わる言い伝えのようなものだ。
この言い伝えをいいことに、毎年クリスマスになるとジーンと操が悪ノリして、ナルをヤドリギの下に立たせて額や頬に散々キスをした。
人から触れられるのが苦手なナルはヤドリギを見るだけでトラウマレベルだろう。
「ヤドリギの下に立ってて大丈夫なの?」
「清が僕にキスするとでも?」
「……」
そう私は傍観者。
楽しんで見ていただけだし、さすがにやり過ぎだと感じたときには二人を止めた。
「私は日本人だから、軽々しくキスはしません」
ハグならまだしも、キスは照れ臭い。
やっぱり自分は日本人なんだ。
「ナルもしないでしょ。だから、今はこの下は安全だね」
「……僕が絶対しないと思っているのか?」
室内はとても静かだった。
まるで二人しかいないように。
ナルは清の頬に触れた。
何だろう、少しの違和感。
だけど心臓の鼓動がうるさくて、他のことなんて考えられない。
彼の自分を見る真剣な表情。
その視線から目をそらすことなんてできない。
月明かりに照らされて、何て綺麗な顔だろう。
"清、僕だよ"
唇を交わす直前、そんな声が聞こえた気もした。
END