第1章 ヤドリギの下
リビングに降りると、マーティンとリンは仕事の話をしていて、操は既に酔っ払いまどかに介抱されていた。
ナルは誰にも関心を示さずいつもの自分の椅子に座る。
ルエラはいそいそとテーブルに料理を並べているので、清もそれを手伝った。
準備が整うと、マーティンが乾杯をしてパーティーは始まりを告げた。
マーティンもルエラも本当に嬉しそう。
当の息子は相変わらずのポーカーフェイスだけど。
「清、大学はどう?楽しい?」
まどかがニコニコしながら話しかけてくる。
結構飲んでるはずなのに、実はまどかはかなり酒に強い。
「うん!宗教哲学は選んで失敗したけど、友達もできたしね」
「あら?彼氏は?エキゾチックだからモテるでしょう?」
「彼氏なんていないよ、残念ながら。
まどか、また日本に行くの?」
「そう、年明けにね。ナルの代わりをしなくっちゃ」
今、日本のSPRは休業中だ。
スタッフや協力者達は長い休日を楽しんでいるのか、物足りないと思っているのか。
まどかから日本の話をよく聞くからか、彼らは友達の友達みたいな感覚だ。
それぞれがよくあれだけキャラが立ってるなと思ってしまう。
「ナル!谷山さん寂しがってたわよ。クリスマスカードでも送ってあげたら?」
「…クリスマスはもう終わるだろう」
「じゃあ年賀状?」
「イギリスにそんな文化はない」
「私、代わりに送ろうか?タニヤマさんに」
「清はあいつらに関わらなくていい」
「「………なんで?」」
まどかとハモって聞いた言葉にナルは返事をしなかった。