第1章 ヤドリギの下
イギリスのクリスマスは家族で過ごすのが定番だ。
店も交通機関もお休みで、家族水入らずの時間を過ごす。
それはSPRも例外ではない。
ただ、二人の人間は出勤したそうだったけど。
ディヴィス家と日下部家はもう何年も一緒にクリスマスを過ごしている。
そこにまどかとリンも加わって、賑やかなクリスマスパーティーが開かれるのだ。
「ハッピーホリディ!」
玄関のチャイムが鳴って、ルエラはまどかとリンを迎え入れる。
約束の時間より10分遅れ。
多分まどかのせいだろう。
「遅いじゃない!まどか!
一緒に飲む相手がいないのよ。付き合って」
操は一人でシャンパンを一本空け、既に出来上がっていた。
「はいはい」と上司をたしなめながら、まどかはリビングを見渡した。
「清は?仕事が忙しかったから、話すのは久しぶりなのよ。
こないだチラッと見たら、少し大人っぽくなったんじゃない?」
「だってもう大学生だからね。化粧のひとつやふたつ覚えるでしょうよ。
清はナルの部屋にいるんじゃないの?」
「大丈夫、それ?一応二人とも年頃でしょ」
「大丈夫よ。だってナルだもん」
「……それも、そうね」
馬鹿にしてるのかしてないのか全くわからないな、とリンは二人の会話を聞きながら思った。