第1章 ヤドリギの下
心臓の鼓動が治らないまま、車を運転してディヴィス家に帰った。
事故に遭わなかったのは幸いだ。
家に入るとナルはさっさと2階へ上がっていった。
らしくないことしてくれちゃって。
見慣れているとはいえ、あんな至近距離であの顔に見つめられれば嫌でも意識してしまう。
ジーンとナルは顔は同じだが、中身は全然違う。
ジーンは何でも話せる気楽な幼なじみだった。
学校の話、家族の話。
一緒にいると何時間でも話していられる。
ナルは取っつきにくいがその懐に飛び込んで、テスト勉強を手伝ってとねだれば意外と最後まで責任を持って教えてくれた。
それで何度、落第を免れたことか。
二人とも大切な幼なじみ。
どちらかが欠けて、どちらかが身代わりになればいいなんて思ったことはない。
二人とも大好きなんだから。
……そう、大好き。
ジーンも、ナルも、同じように。
……?
だったらこの違和感は何だろう?