第1章 ヤドリギの下
ナルの質問は予想していないものだった。
何をそんな、今さら。
「え、私は…」
どうなんだろう。
ジーンがいなくなって、やっと最近お墓参りに行っても泣かなくなった。
夜、急に思い出して涙が出ることもあるけれど。
心にぽっかり空いた穴は少しずつ塞がっているようで、まだまだ完全には塞ぎ切らない。
「大丈夫……」
俯いて小さな声で呟いたがナルには聞こえたのだろうか。
ふと、頬に細長くて白い指が触れた。
「ナル…?」
「無理しなくていい」
「ナルの、意地悪…」
ジーンにそっくりな顔でそんなこと言われたら、涙が出てくるじゃないか。
必死で涙を堪える。
ナルはまだ覚えているのだろうか。
ナルの胸の中で大声を上げて泣いた、あの日のことを。