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ヤドリギ【ゴーストハント】

第1章 ヤドリギの下



「ナル、何で付いてきたの?」
「別に。本屋にも行きたかったし」

いつも茶葉を購入している店は車で30分ほどの距離だ。
カフェが併設されていて、マフィンもとてつもなく美味しい。

「じゃあ、本屋さんに先に行こうかな」

街の中心には大きなクリスマスツリー。
クリスマスムード一色に染まり、どこもきらびやかに飾り付けられている。
少し浮き足立ったこの季節が清は好きだった。

「今年のクリスマスはナルと過ごせるから、ルエラもマーティンも喜んでるよ」
「ああ」
本屋で小難しそうな哲学の本を手に取るナルは上の空だ。
たぶん本の方に夢中なんだろう。

「日本にはいつ戻るの?」
「一度大学に戻るからバケーションに入るまではこっちにいるつもりだ」

それは6月ぐらいまでってことか。意外と長い。
大学も休学してばかりはいられないだろう。

ナルが本を2冊買った後、カフェまでは近いから徒歩で移動する。
チラチラ見てくる視線が気になるが、これはいつものことだ。
容姿端麗な彼はいつも注目を集める。

そんな視線には目もくれず、カフェに到着した。
ルエラに頼まれたダージリンとアッサム、ついでにマフィンも人数分買って帰ることにした。


「……悪かったな、ルエラを清に任せきりになってる」
「そんなのいいよ。どうしたの?」
車までの移動中、まさかナルから親を気遣うセリフが聞けると思わなかった。

「本当は僕が近くにいるべきなんだろう」
「……ルエラはもう大丈夫だよ。ずっと前はすごく落ち込んで、夜も眠れない時があったみたいだけど。まどかも気にかけてくれてるし」

清自身、ルエラは大好きだ。
ナル達が養子に来る前もその後も、変わらず娘のように接してくれる。
自分の家事のスキルは彼女から学んだものだ。
ルエラを支えることに何ら苦はないし、むしろ自分が役に立てているのならそれほど嬉しいことはない。

ナルはふと、歩みを止めた。

「……清は、大丈夫か?ジーンがいなくなって」



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