第1章 ヤドリギの下
クリスマスを一週間後に控えた休日。
昨夜は夜更かしをして、起きると昼前だった。
リビングに降りるとルエラと清がクリスマスツリーに飾り付けをしていた。
「おはよう、ナル!」
「…ああ」
ディヴィス家に違和感なく馴染むショートボブの黒い髪。ぱっちりした二重まぶた。瞳の色は黒より茶色に近い。
帰国してから毎日この家にいるような気がするが、清の家は三軒隣のはずだ。
「ヤドリギは2階に飾ってくれる?
さあ、ナルはブランチにしましょうか」
ルエラが淹れてくれた紅茶を飲んでいると、ヤドリギを飾り終わった清が降りてきた。
「ナルの部屋のすぐ近くに飾ったよ」
いたずらっぽく笑う彼女。
ナルは苦虫を噛み潰したような顔をした。
ヤドリギにはいい思い出はない。
「清はこの家に住んでいるのか?」
「ルエラと晩ご飯一緒に食べてるだけだよ。ちゃんと夜は帰ってる。お母さんもナルもマーティンも夜遅いんだから仕方ないじゃん」
ルエラがカットしてくれたフルーツを口に運ぶ。
確かにいつも自分達は夜遅くまで研究していて帰りも遅い。
清がいることで、ジーンを亡くしたルエラの悲しみも少しは癒えていることだろう。
「ねえ、清。おつかい頼まれてくれない?紅茶の茶葉がもうないの」
「いいよ!ダージリンでいい?」
「ええ。あと、アッサムもあればいいのだけど」
「僕も行く。着替えるからちょっと待っててもらえるか?」
「あら、珍しいわね」
ルエラはにっこり笑った。