第1章 ヤドリギの下
清と出会ったのは8歳の頃。
自分達と同じように日本語と英語を流暢に話せるが、3人だけで話す時は大体日本語だった。
同じ学校に通い、行き帰りもいつも一緒。
放課後も一緒に宿題をしたり、休日は自転車で公園に出掛けたり。
毎日繰り返される他愛のない日々。
それがいつしかジーンが清に対して特別な感情を抱いていたことをナルは知っていた。
ほのかで淡く、それでいて時折胸を締め付けるような切ない感情。
自分はそんな気持ちになったこともないし、その感情の名前も知らない。
どうしたんだと直接ジーンに確かめたこともない。
それでもジーンとのホットラインを通じて流れてくる感情をナルも感じ取っていた。
清はジーンにとって幼なじみ以上の大切な存在だったのだろう。
そして、僕は……。
コンコン。
ノックの音で目が覚めた。
いつのまにか眠っていたらしい。
扉の向こうから声が聞こえる。
「ナル、ご飯できたから降りてきてって!」