第3章 緑玉髄の魂
「武装探偵社の江戸川です。アポはないんですけど、箕浦さんという刑事さんに取り次ぎをお願いしたいのですが」
「箕浦ですね。お待ちください」
ロビーのカウンターで受付を済ませる。さすがは軍警本部というべきか、広々とした待合だった。
一方の乱歩はといえば、まるで映が受付を済ませるのが当然と言わんばかりにソファで足をぶらぶらと揺らしている。
「乱歩さん、楽しいですか、それ」
「まあまあかな!」
「……そうですか」
相変わらずどこを見ているのかわからない眼だ。糸目だからか、それともそのあけすけな態度のせいなのか。いつでもあっけらかんと笑ってみせるようなイメージを持ちがちだが、こう見えて乱歩は名探偵なのだ。
……名探偵、なのだ。
──いやいや、初見じゃ絶対わかんないし。
「ねえ映。なんかお菓子持ってない?」
僕のもう無くなっちゃった!と高らかに言ってみせる乱歩は、やっぱりどう考えても名探偵には見えなかった。